世界の高齢者


世界の健康格差広がる
肥満や高血圧、低所得国で上昇
 世界の健康格差も広がっている。1980年代以降、降圧薬、低コレステロール薬など、循環器疾患に関連する新薬が次々に登場したが、その後の四半世紀について、199の国・地域、910万人の肥満率、収縮期血圧、総コレステロール値の変化を追跡調査することでわかった。その結果が英の医学誌ランセットに発表された。
全世界では、14.億6000万人が過体重、5億人が肥満で、世界全体の平均体格指数、BMI=体重(kg)÷身長の自乗(㎡)は上昇している。特に太平洋地域など中所得地域での上昇率が高かった。
血圧は、高所得地域である米国、西欧で低下を示したのに対して、東アフリカなど低所得地域では上昇傾向が見られた。アジア・太平洋など中所得地域では横ばいであったが、近年は上昇傾向に転じた。コレステロールは、大きな変化が見られなかった。血圧と同様、高所得地域では低下傾向にあったが、ことに東アジア、東南アジアでは上昇していた。
 心血管疾患、脳卒中は、肥満、高血圧、脂質異常であれば、その発症率が高くなる。今回の研究で、低所得国ほど、その危険性が高いことが明らかにされた。また高齢化が著しい、東アジア、東南アジアで、血圧、コレステロール値が上昇しており、今後、この地域で、循環器疾患が急増することが、特に懸念される。
しかし、禁煙、血圧・コレステロール改善指導などで、1980~2000年にかけて、冠動脈疾患死を大幅に減少させたという米国の実績がある。循環器疾患は、食事、運動に注意を払い、適切な薬物療法を受けることで予防が可能である。このことを忘れずに、その対策にあたりたい。
日刊工業新聞 2011年9月30日

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