世界の高齢者


生涯教育プログラムEdventure
旅を通して、賢く生き、老いることを学ぶ
 世界中で高齢化が進んでいる。そして団塊の世代が老人となるという、有史以来まったく経験をしたことがない超高齢社会に突入しようとしている。その対策が急務である。香港で6月に開催されたソーシャルワーク世界会議で発表された新しい動きを報告する。
 オーストラリアでは、1945~64年生まれが団塊の世代である。彼らは、過去の高齢者と比べ、様々な社会経験をしている。学歴も高く、かゆい所に手の届く公的サービスを求めている。またインターネットを使いこなす初めての高齢者集団となる。長寿社会では、高齢者として長く生きなければならないことへの支援が重要なものとなる。例えば、家族、友人の死亡に伴う喪失体験への対応などが求められる。そのためには、高齢医学の知識が、特に大切なものとなる一方で、社会、文化的な側面を考慮したアプローチからの支援も不可欠となる。「長寿ソーシャルワークともいえる新しい学問の確立が必要」と、ラトロベ大学のジョン・マコーマックは主張する。
 団塊の世代は、好奇心が旺盛で、旅行好きである。そんな彼らのために、オデュッセイア旅行は、オーストラリア、ニュージーランドの32大学と提携、真実を求め、見識を高め、知識を得るためのツアーを用意している。まさに生涯教育のプログラムともいえるもので、Edventure(EducationとAdventure からの造語)と呼ばれる。CEOデニス・シモンドは、「旅を通して、賢く生き、老いることを学ぶ」と強調する。
 どちらかというと欧州への旅行が目立つが、3月末から4月にかけて、東洋の神秘を探る11泊の日本への旅が用意された。桜を堪能、日本の文化、宗教、日本人の生活振りを知るためのEdventureである。京都で寺院巡り、仏教、神道について知る。日本文化、特に“寂び”について、茶会、枯山水の庭園などから学ぶ。その後、広島の原爆記念館を訪れ、松江に回り、東京を観光するという“日本学”旅行である。
 団塊の世代が、健康長寿を維持し、上手に老いることができれば、来るべき長寿社会への不安は払拭することができると思った。
日刊工業新聞 2010年7月16日日

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