米国の高齢者


米の「月ロケット計画」
10年以内にがん治療学底上げ
 ケネディー大統領は、1962年9月、ヒューストン市のライス大学で「10年以内に、人類を月に送る」と歴史的な演説を行った。米国にとって20世紀最大の国家事業は、69年7月のアポロ11号打ち上げで実現した。50年の節目にあたり、同市にあるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターは、2013年2月にスタートする「月ロケット計画」といわれる研究プログラムを発表した。
 今後10年以内に、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ球性白血病、メラノーマ、肺がん、前立腺がん、ホルモン療法が有効でない乳がん、卵巣がんの8つに焦点を絞り、死亡者を減らし、長期生存者を激増させることで、がんの治療学全体の底上げをねらっている。総額は30億ドル、アポロ計画にも匹敵する一大事業だ。
 米国内の研究者のネットワークを作り、過去10年間の治癒症例を分析、有効である予防、治療法を分子レベルで解明するなどの計画もある。2015年の米国のがん長期生存者は1130万人だが、世界ではこの10年で、1億人ががんで死亡すると予測されている。がん研究の進展を加速度的に速める必要がある。基礎研究と臨床の場のより密なる連携、また産学協同で、検査法、治療機器、薬などを開発しようというもので、がん政策のあり方も提言することになっている。
 対症療法では、がんには通用しない。私たちは、勇気をもってがんと対峙しなければならない。「21世紀に入っての分子生物学、医用工学などの技術革新は目覚しく、がんに対応するための有力な手段を持つことができた。包括的かつ体系的ながん研究が可能となっている。常に、がん患者のために何ができるかを問い正しながら研究を進めていきたい」。ロナルド・デピンホ同センター所長の言葉である。
日刊工業新聞 2012年9月28日

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