米国の高齢者


人生は80歳代でハイライト
多様な生き方を支える改革を
 人生は、80歳を超えてハイライトを迎えるという説がある。肉体的にみても一番元気である10~20歳代が人生のピークであると考えがちだが、そうではない。米国科学アカデミーが、約35万人を対象としたアンケートの調査結果を発表している。それによると、人生の楽しみは20歳代から40歳代にかけては減少するが、40歳代後半からは、再び増加に転じ、85歳で頂点に達するという。
確かに、ありきたりの幸福は20歳代を過ぎると目減りが始まる。しかし、経験の積み重ねによって、成熟する。さらにより強力な社会への対応力を身につけることで、将来への展望が開ける。加齢にともない、例えば、数学力は落ちるが、反対に語学力、決断力は進歩する。その結果、幸福度、満足度がより大きな老後を迎えることができる。
高齢者の健康状態は、30年前と比較すると明らかに向上している。年金制度等で、安定した収入も確保されている。さらに家族、友人に恵まれることになれば、人生80歳代ピーク説も納得ができる。それを実現できたら、まさに理想の高齢社会である。
現在の日本は、既に少子高齢社会に突入しているが、そこにたどり着くまでの道のりは遠く、さまざまな問題が山積しているように思える。就職難、非正規雇用の増加から若者の未婚率が上昇している。単に子育てを支援するだけではなく、多様な生き方を保障するトータルな福祉政策が必要とされている。
社会保障給付費の安定財源を確保するため2010年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、「中規模・高機能な社会保障」の実現を目指す、社会保障・税一体改革成案が、7月1日閣議報告された。より公平・公正で自助・共助・公助の最適なバランスによって支えられる社会保障制度を構築するための青写真ともいえるが、単なる対策論で、グランドデザインがないとあまり評判がよくない。世界一の長寿国として、一人ひとりがどのように生きたいか、その生き様が反映された改革案が求められている。
日刊工業新聞 2011年7月29日

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