米国の高齢者


リタイアメント・ビレッジ
米国流の攻めの老い支度
 カリフォルニア州チコ市から東に12キロに位置するパラダイスは、リタイアメント・ビレッジとして、広く知られる。ゴールドラッシュの時代には、一攫千金を夢見て米国各地から人々が集まったが、現在は、老人の憧れの町として、総合病院があり、様々な高齢者施設が立ち並んでいる。
自然に恵まれ、ハイキング、サイクリング、ボート、水上オートバイ、釣り、ゴルフ、狩猟、キャンプなどが、心ゆくまで楽しめる環境にあるからだ。元気で介護が必要でない老人は、まずインディペンデント・リビングといわれるホテル風の施設に住む。その後、必要な支援度にあわせて、住まいが変わる。軽度であればアシステッド・リビング、本格的な看護が必要になるとナーシング・ホームに移り住む。
私が訪れたインディペンデント・リビングのある月の1週間の行事を並べてみると、以下のようなアトラクションが、目白押しに続く。
ヨガやベリーダンスの講習、風船バレーボール、お手玉野球、テレビゲームによるボウリング、パターゴルフ大会などが、運動不足を補ってくれる。昼食会を兼ねたビール工場見学会、美術館ツアー、買い物ツアーなどの外出の機会が用意されている。映画鑑賞会やバイブルスタディの時間もある。週2回の血圧測定によって、健康チェックも怠ることはない。また、入居者の誕生日、結婚記念日のパーティーがあり、あらたな入居者のための歓迎会なども随時開かれる。
米国の高齢者は、身体が不自由になるまでは、独立して生活をすることをよしとしている。いつ仕事を辞めるかということについては、個人差があるが、私の友人を見ると、ビッグバースデイといわれる50歳を境として、老後の準備にとりかかる人が多いようだ。私たちは、人生90年といわれる超高齢社会に生きているが、合わせて少子化が進行している。早め早めに手をうつ米国流の攻めの老い支度の必要性があるように思えてならない。
日刊工業新聞 2010年12月3日

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