日本の高齢者


老人力は100歳を超えて本物になる
世界一元気である105歳は超多忙
 福岡県の健康長寿マイスター、105歳の曻地三郎さんについて、先週に引き続き書くことにする。実は高齢者は、自然災害に強い。東日本大震災の被災者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)対策がクローズアップされているが、70歳代になると、50~60歳代に比べて、落ち込む、怒りっぽい、眠れない、抑うつ感などの症状があらわれることが少なくなるという。経験力、いわゆる「老人力」の免疫力は強力で、心のトラブルを予防、たとえ発症しても軽くしてくれるからだ。
 曻地さんによれば、老人力は100歳を超えて本物になる。各世代へのメッセージを発しているが、それによると、60歳代=自分の持っているものを広げよう。70歳代=70くらいで「屈してはならない」。80歳代=駄目だと思ったら駄目になる。90歳代=今からでも遅くない。100歳代=99歳までは助走、100歳から本番、という。
 曻地さんは、昔から勉強が大好きだった。広島師範学校を卒業後、小学校教諭をしていたが、九州帝国大学で学び直し、文学・医学の2つ博士号を授与された。医学博士論文のテーマは「障害(劣等感)重積深化過程」、障害を持つことが引きこもりなどを誘発する過程を解析、その予防策をまとめた。そして障害児教育の第一人者となり、養護施設「しいのみ学園」を設立して、実践をした。
 現在、世界一元気である105歳は超多忙だ。福岡県内での講演会は、既に40市町村で開かれ、2万人以上に健康法を授けた。国内ばかりではなく、2005年からは毎年、海外でも講演、コロンビア大学、ハーバード大学、ケンブリッジ大学などで講師を務めた。5年後の2016年7月には、第16回国際心理学会が横浜で開催されるが、既に特別講演をすることが決まっている。
 曻地さんは、まさに100歳からの青春を謳歌している。
日刊工業新聞 2011年10月28日

>> 老いを思うTOPに戻る