日本の高齢者
テレビ小説にヒント 地域社会が高齢者を支える |
長引く経済不況、地域社会と家族の崩壊、その三重苦に、社会保障の今後のあり方が大きな問題となっている。今週で終わってしまうNHKの連続テレビ小説『てっぱん』に、その処方せんが盛り込まれていると、わが国を代表する経済学者にいわれ、目からうろこが落ちるとは、まさにこのことだと思った。 偶然、一緒のアパートに住むことになった人たちが、楽しく朝食をともにし、笑顔があふれている。そして自然にネットワークの輪が広がっていく。それが崩壊したといわれる家族や地域社会の再生につながる。すでに全国の空家率は約15%に達している。テレビ小説の舞台である田中荘のようなアパートが各地に拡がっていく可能性は、十分にあるのだ。 団塊世代が65歳を超え、単身や老老世帯の高齢者が増え続けている。その対策として、地域包括ケアシステムを構築することが発表され、①介護サービスの充実強化②24時間対応の在宅医療を実現するための医療連携の強化③介護予防の推進④見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスの確保⑤バリアフリーの高齢者住宅の整備が進んでいる。少子高齢社会への準備が、着々と進められている。 その最中、突然、東日本大震災が発生した。追い討ちをかけるように福島の原子力発電所事故が起こり、膨大な数の人たちが、故郷を離れての避難所生活を強いられている。しかも、それは長期にわたることが予想されている。 老人福祉施設を運営している知人は、空いている部屋を高齢の被災者に提供、同行する家族には近くに住んでもらい、将来はその施設の職員になってもらうことができればと考えている。『てっぱん』流のより強力な支援システムが、今ほど求められている時はない。 「人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることができると信じています。頑張ろう日本いかされている命に感謝して」。3月23日から始まった第83回選抜高校野球大会での創志学園(岡山)の野山慎介主将の選手宣誓である。 |
日刊工業新聞 2011年4月1日 |