日本の高齢者


上手に筋トレを取り入れる
加齢による身体機能の低下を防ぐ
 私たちの筋肉量は20歳代後半から30歳代をピークに達する。それ以降は加齢に伴い徐々に低下、80歳代になるとピーク時の5~7割になってしまうという。加齢ばかりではない。神経性疾患などによって身体の動きが不自由になったり、日常の活動不足から筋肉が萎縮する廃用症候群、栄養摂取不良が引き金となる。この筋減弱症をサルコペニアという。
 60~70歳では13%,80歳以上では60%、要介護者では89%にサルコペニアが認められたという研究もある。握力が男性では30kg未満、女性では20kg未満、歩行速度が0.8~1m/秒以下になると要注意だ。身体機能の低下は、さまざまな不都合の原因となる。転倒しやすく、寝たきりなる可能性が高まり、運動量が低下する。摂食・嚥下障害から食べることが億劫になり、栄養が十分に摂れなくなる。サルコペニアがますます進行するという悪循環に陥る。
 筋力トレーニングを上手に取り入れることだ。サルコペニアばかりではなく、心臓循環器系機能の低下を防ぎ、糖尿病の予防効果も明らかにされている。高齢者であっても、週に2~3日の筋トレを9~52週間行うことで、筋力が増大することが明らかにされている。またアミノ酸補助食品を合わせて摂取することで、歩行機能などの身体機能が改善したとの報告もなされている。
 マスターズ水泳の年齢別日本記録を見ても、90歳を迎えるまでは、記録も急激に落ちていないという事実がある。9月末には、101歳を目前にひかえた元消防士のフランス人ロベール・マルシャンさんが、自転車で100㎞を4時間余りで走破することに成功したというニュースが報じられた。日々の努力で、サルコペニアの予防ができることを恐るべき老年力が、証明してくれているように思えてならない。
日刊工業新聞 2012年10月5日

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