世界の高齢者


豊かな死ランキング
日本23位、施設不足や医療費高く
 日本は、世界一の長寿国といわれる。7月末に、厚生労働省より発表された2009年の日本人の平均寿命は、女性86.44歳、男性79.59歳、いずれも過去最高を4年続けて更新した。女性は25年連続の世界一、男性は5位だった。が、喜んでばかりはいられない。現在、終の棲家の役割を果たす特別養護老人ホームへの入所を希望して待機している人が、42万人に達しているという事実がある。
 英国の調査会社エコノミスト・インテリジェンス・ユニットが、豊かな死のランキングを同じく7月に発表している。OECD諸国を中心に40か国で、終末期医療に対する政策、施設の利用しやすさ、医療費、緩和医療の実態などを24項目について評価したもので、日本は23位だった。医療のレベルは2位と高いにもかかわらず、高齢者の増加に施設が追いつかない(28位)、医療費が高い(31位)、終末期医療の専門家が少ない(21位)ことが響いた。
 ちなみに1位は、終末期医療に対する法整備がなされ、ホスピスが社会に根付いている英国で、2位オーストラリア、3位ニュージーランドと続く。医療保険改革法がやっと成立した米国は9位だったが、死について家庭で話される機会が多い点が評価された。経済発展の著しいBRICは、ロシア35位、中国37位、ブラジル38位、インド40位で、終末期医療が充実するまでには、まだ時間がかかりそうだ。
 英国の医療は、NHS(国民保健サービス)により、医療費は原則無料であるが、手術まで1年以上待機しなければならないケースもめずらしくない。また医療者の労働条件が悪いため、医師、看護師が海外に流失していると評判が悪い。しかし、終末期医療を切り口にすると評価がまったく違ったものになった。同様に22位のデンマークは、英レスター大学の2006年の調査では、幸福度世界一となっていた。豊かな死と幸福度は、ほぼ重なるように思うのだが、あらためて質の評価の難しさを思い知らされている。
日刊工業新聞 2010年8月13日

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