米国の高齢者


米ホスピス・プログラム
専門スタッフが終末期ケア
 ホスピス・プログラムとは、限りある命であることが明らかになった患者と家族のための特別なケアである。2008年、米国人死亡者の38.5%にあたる150万人が、このプログラムによって死を迎えた。ただ米国ではホスピスに、訪問サービスによる在宅やナーシングホームでの終末期ケアを含まれるので、すべての人がホスピスという施設で死を迎えたのではない。
米国では、1970年代に末期がん患者のための施設としてホスピスが注目され、各地に作られていったという経緯がある。しかし近年、利用者の死因にがんが占める割合は減少している。死因ががんであるのは、08年では38.7%でしかなく、反対に心疾患11.7%、認知症11.1%、肺疾患7.9%、脳卒中4.0%、腎疾患2.8%となっている。米国のホスピスは、すべての病気の看取りの場、方法としての色彩が強くなっている。
07年に誕生したジョージア州バルダスタ市のラングデル・ホスピスを訪れた。バルダスタ市が属するロウンデス郡ばかりではなく、周辺の計8郡の住民で、余命6カ月と診断された時に入居できる地域密着型ホスピスである。入居者の平均年齢は、75歳を越えており、第一印象では、ホスピスというよりは、高齢者施設と思えるほどで、やはりがん以外の疾患による入居者が50%以上を占めていた。
24時間体制で、専門教育を受けたスタッフが入居者のケアにあたるだけではなく、15の個室は、介護に付き添いたい家族の寝室や台所も付いており、普段の暮らしがそのままホスピスに持ち込めるようになっている。また患者家族への支援にも力を入れている。介護者のバーンアウトを防ぐための休息 レスパイトケアでの利用者も多く、患者家族へのグリーフケアのための特別なプログラムも用意されている。患者の終末期のQOL(生活の質)を維持するばかりではなく、看取る家族への配慮もなされ、あらためて上手に死を迎えるための医療の大切さを教えられた。
日刊工業新聞 2010年11月26日

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