米国の高齢者


スーパーマンも要介護
芸術に親しみ老後生き生き
 スーパーマンは1935年にデビューした。20歳代後半の設定と思うので、現在の実年齢は、ほぼ100歳だろう。さらに超人ハルク、ワンダーウーマン、キャットウーマンなど、米国アニメのスーパーヒーローたちが年老いて、介護を受けている。フランス在住のアーティスト、ジル・バルビエの作品「老人ホーム」(蝋人形、テレビ、ミックスメディア)で表現された世界だ。2月末まで東京で開催されていた「医学と芸術展」に出品されていた。  誰もが、いつまでも若くありたいと思い、抗加齢医学が注目を集めている。米国はその願いが人一倍強いが、歩行器を必要とするスーパーマンや車椅子を利用する超人ハルクの姿に、あらためて歳をとることの意味を考えさせられた。
 米国には、高齢者が芸術に親しみ、自らも表現者になることによって、生き生きとした老後を過ごそうという運動がある。ESTA(Elders Share the Arts)といわれ、約30年の歴史がある。絵画、芝居、写真、音楽、エッセーなどさまざまなプログラムが用意されている。若い時に芸術とは縁がなかった人たちのためには、今まで眠っていた才能を引き出すため、ボランティアの芸術家によるワークショップが、シニアセンターなどで定期的に開かれる。
 昨年、ニューヨークで開かれたESTAの絵画展に足を運んだ。誰もが心から描くことを楽しんでいることが、作品から理解できた。展覧会とあわせて開かれたシンポジウムでは、「今が人生のゴールデン・タイムですか」との質問に、100人近い参加者の約80%が「イエス」と答えた。元気で前向きに生きる高齢者が多いことを教えられた。彼らにとってバルビエの作品は、どう映るのだろうか。
 老人ホームに入ったスーパーヒーローたちは、自慢話に花を咲かせているかもしれないが、思い出だけにふけってはいないだろう。彼らが描く作品を見てみたいと思った。
日刊工業新聞 2010年4月9日

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