日本の高齢者


病院完結型から地域完結型医療へ
環境を整え人間らしい生き方を
 少子高齢社会が進展している。2010年のわが国の死亡者は119万4000人となり、戦後最多を記録したことが、年末に発表された人口動態統計の推計で明らかにされた。さらに厚生労働白書によると2040年の死亡者は166万人と推計されている。現在、日本人の90%は病院で死を迎えているが、それに合わせて病院を増やし続けることは不可能である。あらためて看取りを含めた終末期医療、在宅医療のあり方が緊急の課題となっていることが明らかにされた。
終末期の在宅医療は、家族の負担や不安感が強く敬遠されがちだが、条件・環境が整えば、患者本人は、より人間らしい生き方ができる。介護する家族にも充実感が増すなど、最適な医療が提供できる。京都府医師会では、その推進を図るため、「在宅医療17個条、その人らしい人生のために」を作成している。その要旨は、以下となる。
・在宅療養の可能性は誰にでもある。まずは専門家に相談し、訪問診療をしてくれる医師、歯科医師、看護師を見つける。
・介護保険を申請し、ケアマネジャーに希望や悩みを遠慮なく伝え、自宅で安全に暮らすため、福祉用具を使用、住宅改造を行う。自宅でのリハビリ、 薬剤師の訪問指導も可能となっている。
・家族、親戚、友人の協力を仰ぎ、介護の役割分担をする。介護者が疲れた時、疲れる前には利用できるサービスがある。急変時、看取りはどうするかをあらかじめ、皆で話し合っておく。
・医療・介護費が高額になった時、認知症の症状で困った時などには支援制度がある。同じような悩みを持った人と相談できるようにしておく。独居、認知症の人は、地域での支えと周囲の見守りが大切。自宅療養が困難になったら、皆で次の一手を考える。
実際、住み慣れた自宅へ帰り、死期が延び、最期まで笑顔で過ごすことができた多くの患者さんがいる。病院完結型から地域完結型医療へ、治療から質の高い看護、介護へ、在宅医療の進展で、日本の終末期医療は大きく変わろうとしている。
日刊工業新聞 2011年1月14日

>> 老いを思うTOPに戻る