日本の高齢者


深刻な高齢者の自殺問題
うつ病対策が何よりも重要
 9月10日は、WHO(世界保健機関)が定める世界自殺予防デー、同時に自殺予防週刊が始まり、各地で様々な啓発活動が開かれる。自殺対策基本法が施行された2006年以来、自殺予防への関心が高まっているが、全国の自殺者は12年連続で3万人を超える状況が続いている。10日後には敬老の日を迎えるが、高齢者の自殺は、より深刻な問題を抱えている。
 働き盛りの中高年の自殺が大きく取り上げられているが、昨年の警察庁統計によると、60歳以上を高齢者としてまとめると1万2034人となり、年代別では、一番多くなる。ちなみに40歳代は5261人、50歳代は6491人である。国立長寿医療健康センターは、日本の高齢者の自殺率が諸外国と比較しても高く、特にその傾向が女性に強いことに注目し、対策をまとめている。
 高齢者の自殺の動機としては、健康問題が61%、経済・生活問題が18%、家庭問題が14%になる。糖尿病や脳梗塞など加齢に伴う病気による身体的苦痛、友人や知人との死別、家庭内のトラブルなどがうつ病を誘発、自殺志向が強まると考えられている。したがって、高齢者の引きこもりを防止し、生きがいを創造するなどのうつ病対策が、自殺予防には、何よりも大切となる。
 問題は、精神科の敷居が高く、受診を嫌がる高齢者が多いことだ。うつ病が、認知症と混同され、適切な治療を受けていないケースもめずらしくない。また、高齢の自殺者は、1人暮らしより3世代で暮らしていた人の方が多いという事実がある。この点については、介護を受けるなど家族への気兼ね、申し訳ないという気持ちが、自殺の引き金となっているとの意見もあるが、どちらかというと農村部での問題である。反対に都市部では、1人住まいの孤独死が増え、その原因が自殺であるケースが多くなってきている。高齢社会から超高齢社会へ突入しようとしているが、高齢者の自殺対策は、ますます重要なものとなろうとしている。
日刊工業新聞 2010年9月30日

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