日本の高齢者


長寿国の高齢者ケア
患者本位の医療・介護が必要
 私たちは長寿世界1になった。だが、それは、いつまでも若さを保てることを意味するのではない。年をとれば、身体は衰え、やがて介護や医療施設のお世話にならざるを得なくなる。最近は、患者中心の医療の大切さが訴えられるようになってはいるが、認知症を発症、徘徊、妄想、攻撃的行動などの周辺症状が強いと、身体や手足をベッドや車いすに縛られ、向精神薬の大量の投与を受け、行動の自由を制限されてのケアを受けることがめずらしくない。
 身体拘束が原則禁止され、高齢者虐待防止法が適応される介護保険3施設(特養、老健、介護療養型病院)とグループホームを対象に、全国抑制廃止研究会が3月にまとめた調査によると、3万2000人以上が拘束を受けていた。
 ①切迫性=利用者本人または他の利用者などの生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い。②非代替性=身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない。③一時性=身体拘束その他の行動制限が一時的なものである。以上が身体拘束が許される3原則だが、8000人以上は、この要件を満たしていない違法な拘束であった。これを医療保険型病院までに拡げて類推すると、前者が11万人以上、後者が3万5000人以上になるという。
 介護や医療施設では、利用者・患者の安全確保が重要視されるが、スタッフの人で不足は否めず、つきっきりでケアができる環境にはない。例えば、患者がナースコールをせず、1人でトイレに行き、転倒して骨折をすれば病院側の責任になる。それを恐れるあまり、その対策として、身体拘束をしてオムツを無理やりつけてしまうことになる。しかし、患者・利用者は、自由を奪われることなる。それが引き金となり、さらに認知症が悪化、身体機能が低下してしまう。感染症にかかりやすくなり、高齢者の衰弱をもたらし、結局は死期を早めることになる。
 現在は、おまかせの医療の時代ではない。医師から説明を受け、患者自身が治療法を選択するインフォームド・コンセントが大切にされる時代となった。世界一の長寿国に相応しい患者本位、利用者本位の高齢者医療・介護のあり方を考える必要に迫られている。
日刊工業新聞 2010年6月25日

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