日本の高齢者


物忘れの老い支度
上手な介護で認知症軽快
 高齢社会の進展で、認知症患者は増加の一途をたどっている。米国のレーガン元大統領、英国のサッチャー元首相も患った加齢病で、85歳を超えると4人に1人がかかり、120歳まで生きると全員が発症するという。世界の患者数は3700万人に達しており、わが国に限れば200万人、それが2025年には300万人を突破すると予想されている。
 認知症にかかると、記憶障害や判断力などが低下する。進行すると体験自体を丸ごと忘れてしまう。過去、現在、未来が混乱してしまい、独力で社会生活ができなくなる病気だ。しかし、泥酔者とは違い意識ははっきりしており、妄想、徘徊、攻撃的行動などの周辺症状は、生活環境の改善や上手な介護で軽快することもある。
 ①正面から訂正や説得をすると、攻撃的行動を誘発してしまう。患者の言い分を受容する。プライドを傷つけないようにし、病前の社会的地位・職業の人として接する。
 ②指示は簡潔にする。新しいことは学習困難であることを理解し、馴染んだ生活と活動を継続させる。
 日本神経学会代表理事の葛原茂樹氏が、この5月に開催された同学会の総会で語った介護のコツだ。
 症状を改善する薬は開発されたものの、残念なことに、認知症の根本的な治療法は、まだ見いだされてはいない。しかし、診断に関しては、一歩先んじて、新しい時代を迎えようとしている。認知症による脳の萎縮は、MRI(磁気共鳴画像法)で確認することができるが、がんの診断に広く用いられているPET(ポジトロン断層法)によって、形態的変化が起こる以前にあらわれる神経活動の低下の検出ができる。さらに認知症の約60%を占めるアルツハイマー病は、脳への異常タンパク質であるアミロイドβの蓄積が引き金となると考えられているが、その蓄積を直接画像化できるアミロイド-PETも開発され、より早期での確定診断が可能となろうとしている。
 加齢に伴う自然な物忘れか、病的な物忘れかを知り、老い支度をする。私たちの平均寿命が90歳を超えるころには、そんな対処法が可能になっているような気がする。
日刊工業新聞 2010年6月11日

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